ふがいない僕は空を見た

ふがいない僕は空を見た

ふがいない僕は空を見た

本の帯に書かれている数々の受賞歴。「山本周五郎賞」や「本の雑誌ベスト10」や「本屋大賞」は知っているけれど「女による女のためのR-18文学賞」というのがあるって初めて聞きました。そのR-18文学賞受賞作である「ミクマリ」を含む5篇の小説がおさめられています。

巻頭の「ミクマリ」は、コスプレアニオタ主婦との愛欲に溺れる男子高校生斉藤卓巳の視点で語られてて、性描写の連続でこれが女による女のためのR-18?とどん引き…。なのですが、ここで止めないでよかった!
斉藤くんをとりまく人たちの別の視点で語られている他の4篇を読み進むうちに、どんどん引き込まれていきました。
なかでも斉藤くんの友だち福田くんが語る「セイタカアワダチソウの空」には、やられました!人生で2度目の本を読んで号泣。認知症の祖母をひとりで抱えた貧しい生活で、人生を投げ出しそうになる福田くんに、このままずっとここんな暮らしでいいの?とアドバイスして進むべき方向を示してくれるバイト先の先輩田岡さん。未来への希望を感じつつも、ベタなハッピーエンドにしない、絶妙なさじ加減がよかった!
何度でも読みたい1冊です。