わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

何年も前に買って放置していたのをようやく読了。
これはあとがきにも書かれているように、白紙の状態で一気に読んだ方が面白いかも。何度も途中まで読んでは止まり、また前に戻り…という読み方をしたので新鮮味が薄れて、設定も知っちゃってたのが失敗だったなぁ。
幼なじみである「提供者」ルースのアシストをしている「介護人」キャシーが、子どもの頃過ごしたヘールシャムの寮で過ごした仲間との生活を振り返って語る…という形式で話は進むのだが、特殊な境遇に生まれた当事者というよりも、どこか冷めて客観的な口調(文体)で語られて、淡々と話は進む。
明確な目的を持って生まれた子どもたちが、逃げもせずに静かに自分の運命を受け入れているのが悲しい。そして小説の中ではほとんど描かれないにもかかわらず、命への異常な執着心で「提供者」を作った「親」の醜さが浮き彫りになっていた気がする。提供者の存在を知って気がとがめても、その存在に気がつかないフリをしてまでも、生きながらえないとならないものなのか…。
折しも映画が公開中で、評判も上々の様子。ぜひ観てみたい。