読了

昔のミセス

昔のミセス

1960年代〜70年代の雑誌「ミセス」のページを取り上げて、金井美恵子がエッセイを書く、という本。「フリル飾りが襟と袖口についたガウン風の淡いブルーとグレーのミックスの英国製アンゴラジャージーのワンピース」とか「色が少しあせてクリームがかったくすんだローズ色の絹と、ペパーミント入りババロアといった感じのグリーンの絹を見頃と袖にはぎ合わせた、自ら手縫いしたブラウス」とか、いつものように細かい描写にうっとり…(余談だけど、この引用文を打つと、おせっかいにも『修飾語の連続』という忠告が現れる。笑)当時の“ミセス”のライフスタイルと今の私たちの生活は、大きく違うようでいてどこかに共通するものがあるようで、なかなか興味深かった。
金井美恵子特有の辛口な文章で綴られているのだけれど、一編だけ森茉莉について書かれた文章だけが今まで見たことがない、いつもの皮肉や辛らつさが姿を消し、森茉莉に対する「愛」とか「尊敬」という気持ちだけが全面に現れているトーンで書かれていて非常に驚いたし新鮮だった。
いくつになっても少女のような心と美に対する厳しい目をもつ女性という点で共通するところがあるのかも。