中谷美紀×フランソワ・ジラール「猟銃」

原作:井上靖
演出:フランソワ・ジラール
キャスト:中谷美紀/ロドリーグ・プロトー
翻訳:セルジュ・モラット
日本語監修:鴨下信一
『猟銃』 ひとつは男の妻からの手紙、 もうひとつは男の不倫相手からの手紙、 そしてもう一つは不倫相手の娘からの手紙・・・。 3人の女性、それぞれの無に秘められていた思いが、 男の中で交錯する。演劇ライフより

もうね、全てがかっこいい!!中谷美紀演じる三人の女性が手紙を読むあいだ、ステージの後方に猟銃を手にした男(三杉)がいるものの、一切彼は台詞はなく、最初から最後まで中谷美紀のモノローグだけで構成されている。
ステージ上には大道具小道具が一切配置されていなくて、ミニマリズムの極地ともいえるステージ。薔子のときには水が張った床が、ミドリのシーンでは一気に水が引いて石が敷き詰められた河原のような舞台になり、彩子の場面では床板がぱたんぱたん…と1枚1枚回転しで板の間になる。水が引き時は音もなく石が表れるけれど、板の間に転換するときは石がじゃらじゃらと落ちる音が静かに響いて、これがすごく効果的。
中谷美紀は一度も袖に引っ込まず、ブラウスとカーディガンとプリーツスカートの薔子の衣装をさっと脱ぎ捨てると、真っ赤なドレスのミドリ、そしてそのドレスを脱ぎ去ると白いスリップ姿で彩子は、舞台上で1枚1枚死に装束を身にまとっていく。
この作品は意外なことに中谷美紀の初の舞台らしいけれど、さすが中谷美紀。衣装を1枚はぎ取るたびに、すっと別人に変わる様子は鳥肌もの。これは生で見たかったなぁ…。