空気人形(020)
監督:是枝裕和
撮影:リー・ピンビン
出演:ペ・ドゥナ/ARATA/板尾創路/岩松了
川沿いの古びたアパート。ファミレスで働く冴えない中年男、秀雄が優しく語りかけている相手は、空気人形のラブドール。ある朝、その空気人形が心を持ってしまう。秀雄が仕事に出かけると、メイド服を着て外へ飛び出す空気人形。見るもの全てが美しく、驚きにあふれていた。やがてレンタルビデオ店に辿り着き、店員の純一とめぐり会う。ひと目で恋に落ちた空気人形。以来、その店でアルバイトをするようになり、純一や店長から様々なことを学び吸収していく空気人形だったが…。
allcinemaより
男性の性欲処理が主目的で作られた人形が心を持ったら…という素材が素材だけに、描きようによっては気色悪いエロ映画になりそうな話。しかし、そうならないのは監督の手腕と清潔感がある映像もさることながら、ペ・ドゥナの肉体がかなり貢献していると思う。本当に無機質な人形のような贅肉のかけらもない体。ぎこちない口調も人形っぽさを醸し出していて、日本人俳優を使わなくて大正解かも。というか、日本人でこの役を演じられる人は思いつかないほど、ペ・ドゥナありきの映画だと思う。
悲しくて切ないストーリーも、映画の中で使われている吉野弘さんの詩「生命は」の美しさもさることながら、私はとにかくビジュアルがすごく印象的だった。継ぎ目があるペ・ドゥナの体とか、ペ・ドゥナのファッションとか、ペ・ドゥナの全裸とか…て、ペ・ドゥナばっかりじゃん!(ついでに言えば、空気人形の本来の目的に使われる部分がああなってるのか…ということもw)
特に、ペ・ドゥナがビデオの棚に腕を引っかけて空気がシューシュー漏れるのを見つけたARATAが、破れた箇所にセロテープを貼りおへそ(空気入れ口がそこにある)から息を吹き込むシーンがとてつもなく美しくセクシーだった。