ザ・ダイバー(ネタバレあり)

作・演出:野田秀樹
出演:野田秀樹/大竹しのぶ/渡辺いっけい/北村有起哉

すごい舞台だった。小さいステージでたった4人、大がかりなセットもないのに数脚の小さな椅子とひとつのベンチに布と扇を効果的に使って、現在から過去、現実と『ユミ(大竹しのぶ)』の幻想の世界を非常に上手く表現している。話も複雑に行ったり来たりをするけれど、一切混乱せずにすんなり理解できるところは脚本が優秀だからか。
ストーリーは、1993年に実際に起きた「日野OL不倫放火殺人事件」を下敷きにしたお話。この事件のことは、「そういえばそんなことがあったっけ…」くらいの記憶しかないけれど、なんとも悲しい事件だ。舞台では、野田秀樹が演じる不倫相手の妻がユミに執拗に電話をかけるシーン(電話のリダイヤルを押す仕草が怖いこと!)で、ユミが「すみませんすみませんすみませんすみません」とひたすら謝り続け、そして妻が放つ残酷な一言がユミを鬼に変えてしまう…という場面が非常に辛い。不倫はどうしても容認できないけれど、でもこの男と妻はどうなの?と思わずにはいられない。
ユミ役の大竹しのぶ、やー、やっぱりこの人は天才だわ。そして、テレビよりも映画、映画よりも舞台でよりいっそう輝く人だ。というか、テレビというさまざまな縛りのある小さい枠の中よりも、舞台のほうがのびのびと演じられるのではないかな。